フリフラ雑記帳

フリップフラッパーズの考察、その他をダラダラかくブログです。不定期更新。

フリップフラッパーズ考察 ~はじめに~

初めに

 本ブログはテレビアニメ『フリップフラッパーズ』に関する考察を取り扱っており、ネタバレや私見にまみれています。また、体裁状あらすじなども記載してはいますが、基本は既視聴者を対象としています。ご了承くださいませ。

 

 

執筆の経緯

 僕がフリップフラッパーズに出会ったのは、実は放送開始からしばらく経過した、シリーズも中盤に差し掛かった時期であった。ツイッターなどに流れてくるスクショなどでタイトルと絵はなんとなく知っていたが、内容についてはさっぱりだった。

 それもそのはず、この作品は一口に言い表すにはあまりに複雑で、かつ舞台がコロコロ変わるため一場面の切り抜きだけではわけが分からないのである。おまけに、辛うじて僕が知っていた情報としては『プリキュアみたいな変身もの』というのだけで、ジャンルとして視聴対象ではないと決め込んでしまっていた。

 確かに、『変身もの』というのは間違いではなかったが、しかしそれは作品のほんの一断面に過ぎなかった。

 友人に勧められるがまま、一話を視聴したが、一話の土管に吸い込まれる際のワクワク感、トンネルを突き抜けた先にあるピュアイリュージョンの爽快感、今にも肌に届くような気温、色、音の臨場感、そのすべてにすぐに引き込まれた。

 

 このアニメは、ストーリーの構成上、前半と後半に分けることができ、一部のファンの間ではそれぞれについての評価が分かれている。これについてはある持論を持っていた(個人的には前半派だった)。しかし、先日2/6、久しぶりにマラソンをした結果、全く違う意識を持つようになった。すなわち、シリーズ全体としてよくできていることに気づいたのである。

 

 今月2/24には埼玉での非公式上映会が予定されているらしく(

http://twipla.jp/events/282082)、筆者も(今のところ)行く予定である。それまでに、今までこの作品に対して考えたこと、また先日のマラソンによって得た見解を一度まとめてみようと思い立ち、本ブログを執筆した次第である。

 

 ↑諸般の事情により参加はできなかった。無念の限りである。

 

フリップフラッパーズとは

 『フリップフラッパーズ』とは、2016年秋枠に放送されていた、日本のアニメ作品である(公式サイトhttp://flipflappers.com/)。

 

あらすじ

ある日、志望校を決めかねていた中学2年生のココナの前に突如現れた謎の少女パピカ。謎の組織「フリップフラップ」に所属しているパピカは、どんな願いも叶えてくれるという「ミミの欠片」を集めているらしい。ミミの欠片が存在する不思議な世界「ピュアイリュージョン」に行くには、一人では力が足りないというパピカ。そんなパピカに引きずられるように、ココナは「ピュアイリュージョン」へと旅立つ。ミミの欠片を求め、パピカとココナの不思議な冒険が始まる。

フリップフラッパーズ - Wikipedia

 

 この作品は、ガール・ミーツ・ガールのいわゆる“百合もの”要素、魔法少女や戦隊もののような変身要素、さまざまなピュアイリュージョン(以下PI)を旅するという冒険活劇要素、内気で依存性のある主人公(?)*1

が独り立ちするという成長もの要素、また随所にちりばめられた哲学的考察要素など、実に様々な要素から成り立っており、一部の熱狂的ファンを獲得した。

 一方で、その難解なストーリー性とシリーズ全体にわたる内向性(ただしこれでも監督本人曰く“没個性、没作家性”に徹しているらしい)*2から、一部からは“意識高い系アニメ”と揶揄されたりもした。有体に言ってしまえば独りよがりということである。これには様々な分野からの引用(ストーリーの進行上意味のあるものも多い)に対していちいち解説がなされなかったことも要因の一つかと思われる。

 

作品の魅力

 個人的には、これらの指摘はあながち間違いではないと思うが、しかしそもそも作品のテーマからして内向的になってしまうのは致し方ないことであるともいえる。これには用語解説の項で触れる。

 また、内向に振れすぎないように軌道修正していると思われる部分も存在する。各話ごとに全く違う世界に冒険するのは、作品のカテゴリーを限定せず、クリエイターの自我を希薄にすることによって作品の健全化を図ろうとしている面もあるのではないか。

 元ネタやストーリーに関して必要以上の言及を避けるのも、個人的な心象としては悪くない。いちいち解説してしまうのは野暮であるし、『この作品はこうですよ!』と制作側が提示してしまうのはテーマ性に沿わない。

 演出や作画、音楽など細かいところにこだわっているのも好印象である。アニメーターが作ったアニメ、と言われれば非常に納得のいく内容である。動画としてどのように作れば面白いのかとてもよく計算されていて、見ていて飽きない。手書きのアニメで、あえてアナログ手法を用いているのも好感度が高い(CGアニメはあまり好きじゃない)。

 さらに、このテーマは見える形に落とし込むのは非常に難しいものだったと考える。一種の精神的世界だからである。『今あなたが感じていることを、他人に分かるように絵として図示しろ』と言われて形にできる人が一体どれだけいるだろう?

 この内容を、アニメとして享受できるのはこの上ない贅沢だろう。

 

 難解なストーリー性、アナログな制作手法というのは時代の流れから逆行しているようにも見える。第一話を見終わった後最初の感想が、「いまだにこんなアニメ作る、作れる人がいたとは」であったのは感慨深い。また、一口に言い表しづらい作品性というのもキャッチーからは程遠い。しかし、あえてそれらを捨てることによって、フリフラはモンスター級の完成度を誇るアニメとなっている。こういう“ちゃんとしたもの”をつくるクリエイターをつぶしてはいけない。円盤を買おう。

 

 

 

登場人物

フリップフラップ

パピカ

 本作一人目の主人公。PI研究組織『フリップフラップ』に所属しており、組織内では複数PI間にまたがって無数に散らばる“ミミの欠片”を、PIにダイブすることによって集める実働隊。

 序盤では中学生の姿(14歳?)で現れるが、実はソルトとは幼馴染である。本名はパピカナ。

 アスクレイピオスの前身であるPI研究所(以下PIIとする、筆者による造語)に収容されていた被検体の一人で、ダイレクトドライブ(DD)であるミミのパートナー候補だった。実験は成功し、その後しばらくミミのパートナーとしてPIを冒険することになる。

 “事故”をきっかけにPI内最果ての生命の樹にとらわれてしまうが、その後何らかの形でソルトに回収されている模様。パピカナ時代の記憶はない。

 

ココナ

 本作二人目の主人公。自力ではPIにダイブできないパピカからパートナー候補として白羽の矢を立てられる。以降はパピカと共に様々なPIを冒険しながら“ミミの欠片”を集めることになる。ミミとソルトの娘。

 『両親は事故で死んだ』ということになっており(4話)、おばあちゃんとの二人暮らしだが、実際にはアスクレイピオスの監視下にある。

 

 左太ももに欠片を持っている。

 

ユクスキュル

 ココナが飼っているウサギのような生き物。PI内では“緑の紳士”といういかついオッサンのような第二形態をとり、たびたびメンバーの危機を救う。

 

ソルト

 フリップフラップ所長のおじさんでココナの父親。だいたいこいつのせい。フリップフラップの運営方針を決定しているようで偉そうに命令を下すが、普段何を職務にしているのかは不明。

 PII研究員(所長?)の息子であり、一時はPII所属の研究者でもあった。幼少時、まだ見習い研究員であった時代にミミやパピカと出会う。やがてミミと恋人の仲となる。ミミの欠片を所持しており、そのうちの一つをペンダントにしてお守りのように常に下げている。

 ミミが自分との子供を孕んでいたことを、欠片に散る直前まで知らなかった。

 

 監督によれば(内面、外見の)キャラクターデザインに関しては太宰治がモチーフらしい。*3

 

ヒダカ

 フリップフラップ所属のPI研究者。おもにコンピュータやメカニック担当のような描かれ方をしているが、フリップフラップ内でソルトさんが働いている描写はほとんどないので技術面はジェネラルに受け持っているものと考えられる。

 どのような経緯でフリップフラップに所属したのかは不明。

 

サユリさん

 オペ子。作品内で唯一の常識人といっても過言ではない。

 ヒダカ同様所属の経緯については不明。

 

ブーちゃん

 パピカやココナと一緒に冒険をするロボットで、正式名称TT-392。脳味噌を搭載した奇妙なマシンだが、生き物のように自立して行動でき、また表情豊かなキャラクターである。性別(?)はオスのようであり、作中に登場する女の子に節操なくスケベな視線を向ける。

 

 元ネタはSF小説『ジェイムスン教授』シリーズに出てくるロボット21MM-392と、火星探査機キュリオシティ*4

 

アスクレイピオス

大神官

 ソルトの父で元PII研究員。10話で描かれるように所内研究方針に対しては一定以上の発言力を持っており、またソルトのお願いによりミミの外出(一時的かつ監視下ではあるが)を許可できるなど、明言はされていないが所長であった可能性が高い。

 自らが搭乗してELPISを使った実験を行うが、ミミとパピカが“PIの深部”に触れたことがきっかけとなり、PIに魅せられ発狂。以降『ピュアイリュージョンを現世(うつしお)に』とひたすら口走るようになりPII内で収監される。

 

 が、1年後には何故か所長の座に返り咲いている模様。なんでだ。

 

 “事故”後は宗教組織と化したアスクレイピオスの首領である『大神官』として君臨する。

 

ヤヤカ

 ココナの幼馴染で親友。実はアスクレイピオスの差し金でココナの監視をしている。

 もともとアスクレイピオスの被検体で、ミミの欠片を後天的に埋め込まれている。

 

 トト、ユユと共にPIにダイブし、アモルファスを集めている。

 

トト

 発生初期の段階(胚?)でミミの欠片を埋め込まれた『アモルファスの子供』。ユユの双子の兄。

 

 ヤヤカ、ユユと共にPIにダイブし、アモルファスを集めている。

 

ユユ

 発生初期の段階(胚?)でミミの欠片を埋め込まれた『アモルファスの子供』。トトの双子の妹。

 

トト、ヤヤカと共にPIにダイブし、アモルファスを集めている。

 

ニュニュ

 第三のアモルファスの子供。

 

ココナのおばあちゃん

 両親の死んだココナを優しく見守るおばあちゃん

 

 ・・・と見せかけて実はアスクレイピオスのアンドロイドで、ココナを監視している。

 

その他

彩いろは先輩

 ココナたちの学校の先輩で、おそらく三年生。美術部員。

ココナたちはPIの深部である先輩の記憶を旅した。

 

ミミ

 ココナの母親。夢を介してココナの前にたびたび現れる。

 

 唯一PIに自力で至れる存在(DD)で、PIIにより拘束され、実験を受けていた。外の世界を知らされないまま、幽閉状態で育てられた。

 数少ない外部との接触であるソルト、パピカナと友人になり、特にソルトとは後に恋人関係になる。“事故”により複数PI間に無数に散らばる欠片になってしまう。

 

用語解説

ピュアイリュージョン(PI)

 それぞれのPI、及び客観としての現実世界と相互作用する主観世界。本作品の大きなテーマの一つでもある。「万物の主観を旅する」というテーマである以上、内容が内向的になってしまうのは致し方ないといえる。

 

アスクレイピオス

 かつてのPIIが宗教組織化したもの。被検体の子供を集めてのPI実験は現在も継続中。PI研究の目的は『ピュアイリュージョンを現世(うつしお)に』展開すること。

 

フリップフラップ

 事故後ソルトが仲間を集めて立ち上げたPI研究所。PIIが公営組織然としているのに対し、野戦指揮所のような雰囲気。

 

ダイレクトドライブ

 機械やアモルファスに頼ることなく自分の力だけでPIに至れる存在。ミミとパピカナのこと。

 

ミミの欠片(=アモルファス

 “事故”によって散ってしまったミミの残骸。宝石のような外見をしており、フリップフラップでは『集めると願い事が叶うタカラモノ』、アスクレイピオスでは『集めると世界征服ができる』と教えられている。

 

 

うーーん・・・

 

とりあえず本編見て下さい!

 

なんでもしますから!(なんでもするとは言っていない)

*1:フリップフラッパーズ ピュアイマジネーション 監督:押山清高インタビュー」:フリップフラッパーズ1巻初回特典小冊子 オープニング・エンディング偏,45-46

フリップフラッパーズ キャラクターデザインズ 監督:押山清高×キャラクターデザイン:小島崇史」フリップフラッパーズ2巻初回特典小冊子 キャラクター・アイテム偏[上],45-46 

「パピカ自立変身~ミミ変身 COMMENT」:フリップフラッパーズ5巻初回特典小冊子 キャラクター・アイテム偏[下],41-44

監督は、一巻では

「僕は本作においてあまり明確に”成長”というところに重点を置いていません。結果的に成長するかもしれませんが」

「前半はココナがメインのストーリー展開ですし、彼女が主人公でいいんじゃないかという声もありましたが、主人公はパピカに拘りました。

と述べているが、二巻では

作品の核の部分に触れることでもあるんですが、幼虫がさなぎになって蝶々になる、生き物が変態して成長していくのをパピカとココナの成長に絡めているところもあります。」

、五巻では

「最後に登場する変身は通常の変身とは仕組みが違うため、さらなる変身ではなく、全く別なアプローチからの全く新しい変身として、ゼロからデザインする必要がありました。(中略)花嫁衣裳の様な純白で清潔なスカートに(中略)。以前にもあった羽の様なものは、大きく完全なものにして、成虫への変態を遂げたという事にしました。また、髪の毛や目の色など、以前はミミの色に影響されて変化していた部分がなくなり、変身後も通常と変えない事にしました。絵コンテや設定では自立変身と位置付けています。」(※筆者注:要約すると、「『自立変身』のデザインは、『親離れ、親(巣)立ち』である」ということかと思われる)

「ミミを打ち負かすことは、ココナの成長を描くうえで大事なテーマの一つだったので、ミミの設定には対決するべき存在であることの意味付けを多く取り入れました。」

「ミミは(中略)グレートマザーへと自我が支配されてしまいます。」

とも述べている(引用文中太字はいずれも筆者による強調)。二巻以降についての記述は、これを素直に読み取るのであれば「自分で決めることのできないココナが、無意識のうちに自分を束縛していた存在である母親と対決し、これに勝利することによって、まるでイモムシがさなぎを経てチョウへと変わるように、(今までの自分と決別して)大人になる」というストーリーラインが存在し、なおかつこれは「作品テーマの核に触れる」ということになる。事実一話で登場する樹氷スラッグのイモムシは終盤のPI氾濫の際には蛹になっており、最終話ではチョウとなって羽ばたいていた。これは数ある作品全体のストーリーラインのひとつである「羽化」のメタファーといえる。

すなわち監督は、「主人公はパピカに拘り」つつも、最終的にはココナの成長を作品の核と絡めて表現したことになる。

このことに関する説明は何通りか考えられるが、例えば制作には時間がかかり、またこの作品がオリジナルアニメであること(原作がないので展開が決定していない、制作中に色々と事情、考え方は変わるはず)、あるいは「結果的な成長」をストーリーベースとしつつも「魅せるべきはモラトリアムな思春期の心象」という裏設定的な作り方をしたか、などといったことが挙げられる。

いずれにしても二人のどちらもが主人公格であることは疑いようのないことであり、「いずれが主人公であるか」という「うっかりした思い付き」はともすれば宗教戦争勃発待ったなしである。というか二人で一つみたいなところあるし、まぁ、多少はね?

*2:フリップフラッパーズ インタビュー 監督:押山清高」:フリップフラッパーズ6巻初回特典小冊子 作品資料集:世界観偏[下],46

*3:「ソルト」:フリップフラッパーズ2巻初回特典小冊子 キャラクター・アイテム偏[上],24

*4:「TT-392」:フリップフラッパーズ2巻初回特典小冊子 キャラクター・アイテム偏[上],19-20